2018年5月号
視点

星とたんぽぽ、そして若手研究者育成

年度の替わり目である。新しい目標や計画の季節だ。各大学の年度計画を眺めていると、それぞれの学風やトレンドを見て取れて楽しいのだが、心なしか今年度は「○○な論文を1%以上増やす」など、数値目標を設定したものが増えたように思う。おそらく、省庁系の大きな外部資金を獲得すると、中間評価や最終評価に向けたKPIや目標値が明確化されるからであろう。

数値目標は、まい進すべき方向が分かりやすいので、組織の一体感を増す上でも有益なのかもしれない。実力のある大学がS評価を受けるということになっているが、S評価を受けるために数値目標を目指し皆で頑張っているうちに、実力もついてくるのかもしれない。

一方で、目標値や年限を設定しにくい、つまり、外からも中からも評価されづらい物事はどうだろうか。すぐに数字に表れてこない、若手研究者育成や異分野融合推進は、後回しになっていないだろうか。童謡詩人・金子みすゞの詩「星とたんぽぽ」の一節である。「夜がくるまでしずんでる、/昼のお星はめにみえぬ。/見えぬけれどもあるんだよ、/見えぬものでもあるんだよ。」大学の執行部や事業評価者の方々には、この詩を忘れてほしくないと切に思う。

(天野 麻穂 北海道大学 大学力強化推進本部
研究推進ハブ URAステーション URA)

われわれの顧客は誰か

宮崎県に来て3年目の春を迎えた。今年は、クラス副担任を仰せ付かり、新1年生のサポートを行っている。オリエンテーションやさまざまなガイダンスだけでなく、大学での教育とは何か、という講義まで、対応は多岐にわたる。われわれの時には、ここまでやってくれなかったなぁ、と思いながらも、新生活を始める学生に対して、大学ができる重要な活動の一つなのだろう。新生活への期待だけでなく、不安やどきどきを隠しきれない学生と共に、当方も気持ちが若返るつもりで毎日を過ごしている。

多少なり、私事になるが、これまで当方は、企業支援や産学官連携のコーディネート活動に関わる中で、常に「顧客」を意識した活動を心掛けてきた。ここでの顧客とは、組織の内外を問わず、企業の経営者や研究者、地域や関係機関の方々である。私見になるが、産学官連携のコーディネートや研究支援に関わる活動は、究極のところは「顧客に対するサービス業」であると考えている。「できない」ではなく、何が「できるか」を考える活動である。

当方にとって、現在の一番大事な顧客は学生である。彼ら・彼女たちが、大学生活を通じて、何を学び、どう成長していくのか、この過程に関われることの幸せをかみしめながら、新米教員として研さんを重ねていきたい。

(丹生 晃隆 宮崎大学 地域資源創成学部 准教授)

編集後記

前職で加賀、金沢、羽咋、七尾、輪島、珠洲と石川県の全域を3日かけて取材したことがある。17年前のことだ。北陸新幹線が開業し、丸3年、初めて降り立った金沢駅は当時の面影は全くなく、開発が進み、白人の観光客があふれていた。その疑問を金沢大学の向智里理事・副学長にぶつけると、アジアより欧米とオセアニアからの外国人観光客が圧倒的に多いそうだ。影響は大学にも変化をもたらし、これまでほとんどいなかった東京を中心とした関東首都圏からの入学者が増えたという。特急でも金沢~上野間を6時間半も要した時代を知る向副学長は感慨深げだった。金沢~東京間2時間半のインパクトは観光だけではなかった。

(本誌編集長 山口 泰博)