2018年6月号
特集2 - 「酒」で地域を潤す
酒ならまかせろ  
「三重大学産学連携認定商品」制度

三重大学は産学連携認定商品制度を構築し、大学ブランドを活用した地元企業の販売戦略を後押ししてきた。中でも地元酒蔵と開発した酒が群を抜いて多く、制度づくりのノウハウは他の地域でも参考になりそうだ。

日本酒をはじめ地ビールやハイボールも

三重大学が「三重大学産学連携認定商品」の制度構築に動いたのは、地元企業から大学のロゴを使った商品が出せないかという要望が出てきたからだ。

2009年に始めた企業の大学ブランドを活用した商品戦略で、企画進行中のものを含め23商品がこの制度で生まれ、その数は年々増える傾向にあるという。認定商品は酒や菓子など「食品関係」と、耐震シェルターや可搬式折りたたみソーラーパネルなど「食品関係以外」に分類され、中でも日本酒をはじめ地ビールやハイボールなど酒類が多い。

写真1 産学連携認定商品の酒を前にする三重大学の八神寿徳助教


酒類が多い背景

三重の気候は稲作に適しており、「山田錦」をはじめ高品質な酒造好適米(酒米)が作られている。また新潟や長野には及ばないが、県内に残る34もの酒蔵では数多くの日本酒が醸造されている。2016年5月に開催された伊勢志摩サミットでは「而今(じこん)」や「作(ざく)」をはじめおよそ40種類の地酒が振る舞われ、売り切れが続出する地酒もあるほどで、日本酒好きにはたまらない銘酒の里だ。

そんな背景もあり、三重大学でも地元酒蔵とさまざまな酒を輩出してきた。日本酒では、生物資源学部の学生がインターンシップで津市の寒紅梅酒造株式会社と共同で製造から販売までを担った「日本酒 三重大學」、ワインのように飲みやすい日本酒というコンセプトで学生の発想を基に企画開発された「日本酒 トレセ」、三重大学附属農場で開発した酒米「弓形穂(ゆみなりほ)」を多気郡多気町の農事組合法人四疋田営農組合が栽培、町おこしとして同町の河武醸造株式会社で醸造した「日本酒 弓形穂」、「日本酒 弓形穂しずく」などがある。また、梅酒も「日本酒 三重大學」に梅を漬け込んだ日本酒ベースの「梅酒 三重大學」、いなべ市梅林公園の梅と菰野町の関取米を原料にした「梅酒 紅翠」がある。「梅酒 三重大學」は第八回天満天神梅酒大会梅酒部門で210銘柄中2位を獲得した実績を持つ。

そのほか、伊勢市の有限会社二軒茶屋餅角屋本店と開発した地ビール「ヒメホワイト」は、地域イノベーション学研究科で研究した天然酵母を利用しており、国際品評会「インターナショナル・ビア・カップ2014」で金賞を受賞するほど本格的だ。多気郡大台町産のゆず果汁だけを使用した「奥伊勢ゆずハイボール」は、近鉄グループホールディングス傘下で流通事業を担う株式会社近鉄リテーリングが企画し、伊勢市の株式会社伊勢萬と共同開発。17年夏季限定で観光列車「しまかぜ」などで販売された。

線引きの難しさ

これらは、あくまでも三重大学との共同研究・共同開発の成果に基づいた商品に関して、商品のラベルやチラシなどに三重大学のロゴ、シンボルマークや「三重大学との共同研究の成果に基づく商品」である旨を表示することが可能な制度であり、品質を保証するものではない。制度スタート当初は大学ロゴの商標を使用許諾する主旨で対応していたが、特許庁に確認したところ、国立大学法人がライセンスするのは難しいことが分かり、適切なルールをつくってきた。

「単に大学ロゴ等を表示しただけでアカデミックな貢献をしていないものはこの制度で認定の対象としておりません。大学側の関与形態や貢献度もさまざまであるため、どこまでを認定商品にするかの線引きが難しいのです」と、地域イノベーション推進機構知的財産統括室助教の八神寿徳氏は説明する。

企画・開発のストーリーがしっかりしているものは、学内知的財産評価委員会で審議し、認定商品としての契約書を交わした上で運用されるという。また、食品関係については、健康機能食品などの表現でかなり制約を設けざるを得ない。

ただ、大学生協のみで販売する商品は認定商品としての契約書も使用料も不要にし、簡略化した。大学生協以外でも販売する場合は対外的にも目の触れる流通となるので、契約書を交わし、販売に関するルールを定めている。また、直近の決算による売上高や売上予測に基づく管理料程度の使用料を求める。実際は年間使用料が1万円の商品が多く、それ以上の金額になるものは全商品数の15%ほど。残りの85%の商品は全て食品分野ではあるが、生物資源学研究科と桑名市の醤油・調味料メーカーヤマモリ株式会社と共同開発した「三重大学カレー」は、年間1,000万円以上売れるヒット商品となった。

表1 ロゴ使用料は驚くほど安い


業界ごとのルールにどう対応するか

酒米の権利保護方法としては、農林水産省の品種登録制度がある。前述の酒米「弓形穂」も品種登録出願を行い、2010年2月に品種登録された。一方で、農産物の銘柄の設定登録を行わないと酒造好適米として扱われない。三重県は、岐阜、愛知、三重を管轄する農林水産省の地方支分部局である東海農政局に酒米銘柄設定登録が必要だった。

図1 産学連携認定商品の年度別契約件数


制度を進めていく上では多岐にわたる商品や製品を扱うことになるが、全ての業界スタンダードの熟知は不可能に近い。その都度コミュニケーションを密にしながら進めるほかない。酒類業界の仕組みや手続きなどの経験がなかったことでかなり苦労をしたようだ。

八神助教は「毎年ニーズが増えているので、広報とも協力して、大学側から積極的に認定制度を進めていきたい」と語った。

(取材・構成:本誌編集長 山口泰博)