2018年11月号
特集 - 「飲・食」を集めて貢献 産学官
三重県工業研究所 
超簡単 色鮮やかで軟らかいドライフルーツの作り方

熱風乾燥前に数分間電子レンジで前処理を加えるだけで、従来品より色鮮やかでみずみずしいドライフルーツを作ることができる。作り方の簡単さ故に、果樹農家の6次産業化の敷居を低くしそうだ。

地元生産組合から寄せられた課題に対応

ドライフルーツといえば、どんな果物を連想するだろうか。例えば、干し柿は日本の代表的なドライフルーツだ。秋から初冬にかけて、家の軒下に柿を干す風景がどこでも見られたが、最近ではそれも少なくなった。スーパーなどの小売り店頭で見かけるドライフルーツは、ブドウやアンズ、イチジク、リンゴ、バナナなどが一般的だが、一部生産地の商品を除けば、そのほとんどが輸入品だという。

加工前の果物は一定期間を過ぎれば腐ってしまうが、ドライフルーツは、水分が減少し糖濃度が高くなることで、長期間の保存が可能となる。流通面では、容量や重量が減ることから、輸送のしやすさや、保存食としての活用にもメリットがある。しかし、単に熱風乾燥しただけでは、しわが寄り色も悪くなり、おいしそうに見えない。

三重県工業研究所は、県内の生産者団体から「梨はドライフルーツにできるのですか」という相談を受け、これまでにない、色鮮やかで軟らかい「セミドライフルーツ」を開発した。

ドライフルーツの種類

ドライフルーツはいくつか製造方法があり、それぞれに一長一短がある。例えば「天日干し」は、昔ながらの干し柿や、海外でレーズンなどに用いられる。しかし、乾燥速度が気候に影響され、衛生面の懸念もある。「熱風乾燥」は、装置が単純で比較的低コストだが、酸化酵素などによる変色や表面硬化が難点だ。減圧下で水分を蒸発させる「減圧乾燥」は低温での処理が可能だが、機器がやや高価である。輸入品に多く使われている「糖置換」は、糖による濃縮後、乾燥する方法で、安定した色や保存性に優れるが、その名の通り糖を多量に含む。凍結させてから真空中で水分を蒸発させる「真空凍結乾燥」はいわゆるフリーズドライ製法で、形状を維持でき、色や成分変化が少ないが、機器が高価であるとともに、セミドライ製品が作りにくい。また最近では、バナナチップのように低温で揚げる「減圧フライ」製法もあるが、油で揚げるため油脂を多く含むとともに、セミドライ製品には適さない。

電子レンジでチンするだけ

セミドライフルーツの開発においては、まず無添加でおいしそうな色をどう保持するかが求められた。三重県工業研究所は、コストの安い熱風乾燥法を基本とし、乾燥前の処理で変色を抑えることを考えた。農産物の変色防止法はさまざまであるが、加熱により酵素のはたらきを抑える方法が有効であった。特に、マイクロ波加熱は、内部まで迅速に加熱する方法で、電子レンジを利用できるため、効果的だった。さらに、変色防止だけでなく、乾燥時間も短縮できるという思わぬメリットもあった。

マイクロ波処理(電子レンジにかけた)後、熱風乾燥機に入れる
梨(左下のカゴ)とシャインマスカット (三重県工業研究所で)


梨のドライフルーツ 左は従来製法の熱風乾燥のみ、右はマイクロ波処理後に熱風乾燥したもの


ブドウや桃、リンゴも乾燥時間が短縮

一般的な製法で梨のドライフルーツを作ったところ、乾燥には50度で3日程度を要し、表面だけが乾燥して硬化し、内部の乾燥は遅かった。そしてポリフェノールの酸化が原因で、褐色化し色も悪くなった。

マイクロ波処理後の熱風乾燥日数は2日程度で、一般的な製法の3分の2に短縮できた。作り方は極めてシンプルだ。まず梨を4分の1から6分の1程度にカットし、皮と芯を取り除く。これを電子レンジで所定時間加熱処理した後に熱風乾燥させる。

電子レンジにかけることで、果肉の組織が破壊され乾燥しやすくなり、酸化酵素の活動が失われ、褐色化が抑制される。梨は表面も内部も軟らかさを保ったまま、濃い黄色からオレンジ色に近い色に落ち着く。見た目にはみずみずしさが残っているが、水分の低さと糖度の高さにより、長期保存にも耐える。1年の常温保存試験では、菌はほとんど増えなかったという。しかし、変色防止の目的で、念のため脱酸素剤を使用した方が良い。

ブドウ(シャインマスカット)でも試したところ、従来品の4割程度、24時間前後の熱風乾燥(70度)で製品化が可能だ。そのほか、リンゴ、桃も従来品より色が良くなった。ちなみに熱帯性の果物はうまくいかなかったという。

のりたけ農園の梨のドライフルーツ「なしドラ」(1袋500円)


のりたけ農園(三重県津市) 増築した作業場でドライフルーツを作る乗竹克哉さん


マイクロ波前処理と熱風乾燥によるドライフルーツ製造法は三重県が特許を取得しており、県と特許ライセンス契約を結んだ上で販売が可能で、県外の事業者も契約できる。実施料は販売額の一定割合で、一般的な額と比較し驚くほど安い。初めての事業者には、同研究所の熱風乾燥機、業務用電子レンジなどの機器を使用させ(有料)、試作のアドバイスを行うこともできる。

特許製法は業務用電子レンジと熱風乾燥機があれば実施可能で、特別な機器を必要としないので普及しやすい。その上、無添加で国産となれば需要が高いので、6次産業化に弾みがつきそうだ。

(取材・構成:本誌編集長 山口泰博)