2018年11月号
単発記事
DEMOLA~大学企業間の世界的共創提携~
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杉村 逸郎 Profile
(すぎむら・いつろう)

北海道大学 産学・地域協働推進機構 産学推進本部 産学協働マネージャー



DEMOLA(デモーラ)とは?

2017年度、北海道大学は、東北大学、小樽商科大学などとコンソーシアムを組み、起業活動率の向上、アントレプレナーシップの醸成を目指し、わが国のベンチャー創出力を強化する目的で、大学コンソーシアムを支援する文部科学省のプログラムである「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」に「EARTH on EDGE」と名付けたプログラムを提案し、採択された。六大学で構成される「EARTH on EDGE」の中で、北海道大学と小樽商科大学は「EARTH on EDGE 北海道」という単位を結成し、「さまざまな社会課題をフロンティアと捉え、自らビジネスを通じて切り開くことができる人材」となるアントレプレナーとともに「企業内で新しいビジネスや部門を立ち上げるリーダーのような人材」となるイントレプレナーの育成を進めている。イントレプレナー育成のためのプログラムが「DEMOLA」である。

DEMOLAとは、企業・自治体などが抱える課題に対して学生と企業などの担当者がチームを組みその解決策を約2カ月かけて練り上げていく、DEMOLA Global社提供の「フィンランド発祥の課題解決プログラム(DEMOLAプログラム)」を含む、オープンで、学際的で機敏なイノベーションのためのプラットフォームである。10年ほど前にフィンランドのタンペレ大学で始まったプロジェクトを起源とするが、現在は大学から独立したDEMOLA Global社の事業となっており、大学の枠を超えた国際的なネットワーク(現在15カ国以上で56以上の大学が参加)に発展している。DEMOLA発祥の地であるフィンランドでは、ノキアなどの大企業から創業間もないベンチャー企業まで、幅広い企業がこのプログラムを活用しているなど、これまでに世界各国で1万人を超える企業の方や学生が実体験し、数多くのアイデアが実用化されている。北海道大学は2017年度、日本で初めてDEMOLAプログラムを導入、担当する大学職員のDEMOLA社でのトレーニング終了(DEMOLAファシリテーター)を経て、DEMOLA NETWORKの一員としてDEMOLA HOKKAIDO*1を設置し、2018年度より本格的に活動を開始している。今年8月4日~9月22日に北海道大学で行われた、第1回DEMOLA HOKKAIDOでは、株式会社HBA(IT)、株式会社INDETAIL(IT)、株式会社さくらコミュニティサービス(介護サービス)、株式会社丸ヨ池内(百貨店)など地元企業4社が参加し、北海道大学、小樽商科大学、北海道情報大学の学生と共に取り組んでいる(写真12)。

写真1 第1回DEMOLA HOKKAIDO Kickoffイベント


写真2 学生たちの取り組み


なぜDEMOLAなのか?

近年、イノベーション創出の活性化のため、大学などの研究開発成果を基にしたベンチャーの創業や、既存企業による新事業の創出を促進するために学生のアイデアを利用するアイデアコンペやビジネスコンペなどのイベントがさまざまなところで行われている。主催者の思惑や目的によるところが大きいが、多くのコンペでは、基本的に疎通機会が要項のみに限られているなど、綿密なコミュニケーションを取りにくい、参加者は主催者の意図に応えられているのかが分からず主催者も参加者の意図をくみ取ることができないといった問題があり、最終的な審査が「好み」に大きく左右されてしまうといったことが起きている。

ではDEMOLAはどうだろうか? DEMOLAとは、彼らの言うところの「an ecosystem of creative action for students, companies and universities」であり、「企業-学生-大学が一体となって継続的にイノベーションを共創する」ことをコンセプトとしている。その仕組みは以下のとおりである。

まず、企業などとDEMOLAファシリテーターが協力して問題を読み解き、学生向けに課題を設定する。課題はWeb上に公開され、参加を希望する学生は公開された課題を読み、取り組みたい課題に対してエントリーを行う。学生の専門性、やる気、さまざまな持ち味などを考慮し、DEMOLAファシリテーターが学生メンバーを選抜、企業担当者を含めた多様性のあるチームが編成される。チームは、DEMOLAファシリテーターによるさまざまなレクチャーを受けながら、ブレインストーミング、フィールドワーク、プロトタイピングなどを行い、約2カ月間をかけて課題に対するアイデアを練り上げ、最終発表会においてショートプレゼンテーションを行う。アイデアなどを含めた成果の審査は課題提供企業が行い、その成果が価値あるものだと判断した場合、学生チームに対して報酬を支払う。会社がその成果に価値がないと判断した場合、報酬は発生せず、成果は学生チームの所有となる(図1)。このように、DEMOLAにはプログラムを通じた「企業-学生-大学」の綿密な連携、チームメンバーの多様性、明確な知的財産権の取り扱い以外にも、ヨーロッパ単位互換制度(ECTS)との連携など、他のプログラムにはない多くの特徴がある。DEMOLAは「学生は下請けではなくイノベーション創出の主役である」ということを体現しているプログラムの一つであり、「企業-学生-大学」といった垣根を超えた世界的な国際交流の場としても機能する可能性を持っていることもDEMOLAに対して期待しているところである。

図1 DEMOLAの仕組み


今後の展望

北海道大学では、来年度以降も年数回のDEMOLA HOKKAIDO開催を継続的に行っていくことを想定し、そのための体制を構築中である。例えば、主役である学生が少しでも参加しやすくなるよう単位認定の対象科目としての運用を試行しており、第1回DEMOLA HOKKAIDOでは大学院共通科目としての取り扱いを行っている。

また、DEMOLAで重視している学生の多様性を確保するため、北海道大学、小樽商科大学ビジネススクール以外の大学生・大学院生の参加も認めており、第1回DEMOLA HOKKAIDOでは北海道情報大学の学生も複数参加し、自分の持ち味を生かして活躍している。

DEMOLA HOKKAIDOは、今後もさまざまな大学の学生参加を呼び掛け、大学企業間のみならず、大学間の垣根を超えた真の多様性を持つ実践的なイノベーション・エコシステムとして機能することで、参加した学生および企業担当者が将来の産業構造に変革を起こし、世界市場における新しい顧客価値の創造と提供をしていくことに寄与したいと考えている。

*1
DEMOLA HOKKAIDO
https://hokkaido.demola.net/ (accessed 2018-11-15)

DEMOLA HOKKAIDO事務局
https://demolahokkaido.wixsite.com/hokudai (accessed 2018-11-15)