2018年12月号
単発記事
ハイブリッド3D測量で土木現場の働き方改革を
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森 誉光 Profile
(もり・たかみつ)

株式会社エムアールサポート*1取締役/ICT事業統括責任者


ハイブリッド3D測量とは

地形や構造物を立体的な位置データにして計測する技術、いわゆる3D測量が土工の分野に一般的に普及しだして数年が経過した。この3D測量の普及は、現場の生産性向上を狙って国土交通省が推進する取り組みであるi-Construction(アイ・コンストラクション)*2によるものである。しかし、実際の土工の現場で3D測量を運用すると大きな壁にぶつかってしまうのが現状である。その大きな壁とは、マニュアル通りの観測方法では、現場にとって必要なところが見えない3Dデータになってしまうという点だ。現場作業に使えないデータは実際のところ「お荷物」でしかなく、生産性向上どころか低下という事態を招いた現場も少なくない。

そこでわれわれは、現場作業で使える3D測量を生み出すべく、「ハイブリッド3D測量」という技法を生み出した。このハイブリッド3D測量は、現在最も計測精度が優れている、地上据え置き型の3次元レーザースキャナーが計測した点群データ*3を、他の計測方法の優位点をもって強化するものである。この優位点同士を合成する方法で、現場で使えない3Dデータが、現場で便利に使える3Dデータに変わった。

ピンポイントにピントを合わせて強化する

現場で使えない3D測量とは、最終的な成果の資料作成のみにフォーカスし、現場作業でピンポイントに必要となるデータを取得できていない3D測量である。ここでいう必要なデータとは、舗装修繕工事に関して挙げると、舗装の幅員、幅員変化点の位置、マンホールの位置や大きさ、道路設計の基本となるセンターラインの位置情報などである。そこでこれらの位置情報を、現場監督と打ち合わせた上でトータルステーション*4を用いて計測し、3次元レーザースキャナーで計測した点群データに加え強化した。この技法は電子マーキング法といい、この技法により現場で欲しい情報に直結した位置情報が3Dデータから得られるようになった。さらにドローンで計測した色彩情報も加えて強化し、欲しい情報が視覚的に分かりやすく、取り出しやすい環境も整えた。

つまり、現場の声を常にヒアリングし、その要望にピントを合わせて強化を施した3D測量。それがハイブリッド3D測量である。

見えないデータから活用できるデータへ

図1-aは、京都市内でも特に交通量が多い交差点の一つである赤池交差点を3D測量で観測したデータだ。こういった交通量が多い路面の調査を、地上据え置き型の3次元レーザースキャナーで行った場合、通常はこの図で示すように色彩情報が不明瞭なデータになる。これは3D計測中に、車両が路面をシャッター*5してしまった時に、路面の色彩データが破壊されてしまうことが原因である。われわれはこれを色彩ノイズと呼んでいる。この図を拡大したものが図1-bだが、色彩ノイズが混じった3Dデータからは、路面の詳細がほとんど読み取れないことが分かる。しかし、この色彩ノイズによって色彩情報が破壊された3Dデータであっても、地形の起伏などの立体情報は、現在の技術では最高精度の路面データである。そこで、この立体情報に、ドローンによる3D測量から得た色彩情報を合成し、情報の改善を試みた。

図1-a マニュアル通りの方法で観測した3Dデータ


図1-b マニュアル通りの方法で観測した3Dデータ(部分拡大)


その結果の画像が図2-aである。ドローンで撮影した写真の解析による3D計測法(Structure from Motion)は、標高精度の面で地上据え置き型の3次元レーザースキャナーより劣るが、得られる色彩情報は現在の技術の中で最高の画質を誇る。この二つの3D測量法のデータのうち長所同士を掛け合わせることで視認性の高い3次元データを作り出すことができた。

図2-a ハイブリッド3D測量の3Dデータ


図2-bで示す図は、図1-bと全く同じ地点を同じアングルから見たハイブリッド3Dデータである。この二つを比べると、ハイブリッド3Dデータは明らかに色彩が補強され、路面の状況が詳細に把握できるように改善されていることが分かる。ここへさらに、現地で取得した電子マーキングの情報を追加した(図2-c)。これで白線の角や、舗装の端部が強調された。こういった設計に関わる位置情報は、修繕計画の段階で必ず使用する情報なので、ピンポイントにいつでもすぐに閲覧できる状態であることが実際の現場では求められる。

図2-b ハイブリッド3D測量の3Dデータ(部分拡大)


図2-c 電子マーキングを表示したところ(舗装端部、白線の角)


図3-aは交差点部中央を拡大したハイブリッド3Dデータだ。拡大すると路面の損傷の詳細まで見て取れる(図3-bc)。路面の調査にはクラック調査という項目があり、この調査は路面のひび割れなどの劣化状況を判定するものである。このハイブリッド3Dデータの色彩情報からは、そういった路面調査のデータまで引き出すことが可能だ。

図3-a ハイブリッド3D測量・交差点中央


図3-b ハイブリッド3D測量・交差点中央(部分拡大)


図3-c 交差点端部の詳細。マンホールの種別、白線、構造物の配置、舗装端部の位置情報、クラックの大きさと範囲、チョークでのマーキングなど、舗装修繕に必要な情報が全て抽出できる。


これらは現場の需要を常にヒアリングし、それに応えた結果、生まれたものである。だからこそ現場のニーズにマッチした3Dデータとなっており、データの利用者からは特に高い評価を得ることができた。1回のハイブリッド3D測量によって詳細な情報を全て取得できるという利点は、計測の日数や、危険作業に当たる人員の圧縮にもつながる。

路面調査の改革から働き方改革へ

このハイブリッド3D測量によって、舗装修繕工事に関して行う路面調査は一度の調査で一気に賄うことができるようになった。費用対効果の面からみても現場に大変好評で、路面調査が大幅に改革できたと言える。今後も常に現場の目線にピントを合わせ、さらに技術を強化したい。

今回は路面調査にフォーカスした事例を紹介したが、こういった情報強化の必要性は、どのジャンルの3D測量にも言えることである。現場の声や使い勝手を無視した技術改革は、これからも現場にとって作業工程が増えるだけのお荷物であり続けることは容易に想像できる。だからといって、作業工程を減らすために計測を安易に簡略化することは、使いにくいデータを粗製濫造することにほかならない。ICTによる働き方改革を真に実現するためには、費用対効果を鑑みて、実際にデータを受け取る現場員の声を常にヒアリングし、現場と二人三脚で技術を磨き続けることが肝要だろう。

*1
株式会社エムアールサポート
http://www.mrsupport-inc.com/(accessed 2018-12-15)

*2
i-Construction - 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.html(accessed 2018-12-15)

*3
コンピューターで扱う位置情報の集合のこと。ポイントクラウド。

*4
距離と角度を同時に観測できる測量機器。現在、測量の現場で最もよく使用されている。

*5
カメラ前をふさぐ事。映像業界の専門用語。