2019年1月号
特集 - 人材交流で分かる銀行と大学の本気度
山形大学 
銀行の本気度ナンバーワンの学金連携

山形大学地域価値創成学研究所には、荘内銀行と米沢信用金庫から出向する連携推進研究員が在籍している。研究員として大学院で学びながら、企業との共同研究や受託研究の促進といった研究に必要な支援業務のほか、ベンチャーの育成、事業化推進など大学の業務もこなしている。

10年の歴史

山形大学と地元の銀行との緊密な連携は今に始まったことではない。同じ船に乗る「運命共同体」には2007年から10年間継続してきたベースがあり、その地歩を確実に築いてきた。

地域活性化策と販路開拓を目的に、銀行はビジネスマッチングなど顧客企業に対し本業支援を行ってきた。しかしそれはあくまで単独か、営業区域が競合しない銀行同士で、営業区域が競合する銀行同士が協力し合って企業支援する例は少ない。そんな競合同士を大学がハブとなってまとめ、企業支援を行うのが「学金連携プラットフォーム」だ。

参加する金融機関は、山形県内に本支店を置く地方銀行3行、4信用金庫、3信用組合と、二つの政府系金融機関の山形県内の支店、中小企業支援を行う1団体の全13機関である。その主要な目的は、金融機関勤務者を対象とした目利き人材研修と、もう一つは、研修や実践によって認定を受けた「産学官金連携コーディネーター」による企業支援だ。

コーディネーター研修を実施し、条件を満たした受講者は「山形大学産学官金連携コーディネーター」として公式に認定。現在、認定を受けているコーディネーターは298人。彼らは所属する金融機関で企業の目利きをして課題を明らかにし、相談を受け、その解決に当たっている。

山形大学 学金連携プラットフォーム


大学職員と大学院生の2足のわらじ

荘内銀行 山口拓也氏

2018年4月から山形大学に出向している荘内銀行の山口拓也氏は、入行4年目の26歳だ。大学職員として業務を切り盛りしながら、同大学の社会人大学院に入学、技術経営(MOT)を学ぶ学生でもある。

学金連携プラットフォームを開始した当初は30代が多かったが、年々若い人が参加するようになった。この制度も行内に浸透し、行内公募でやる気のある若い行員が多く応募するようになり、銀行側も「鉄は熱いうちに打て」ということわざにあやかり、若手行員にも門戸を広げ柔軟に対応しているようだ。

人件費と学費を出向元の銀行が負担することで、行員は実務経験を重ねられる。加えて銀行は、行員が学位を取得することで、実効性と確実性の高い産学官金連携人材を確保できる。

荘内銀行と米沢信用金庫は特に積極的で、産学連携における取り組み姿勢は銀行の中でも本気度ナンバーワンといえよう。その証左に、山形大学は内閣府が主催する産学官連携功労者表彰2016で荘内銀行、米沢信用金庫と共に選考委員会特別賞を受賞、学金連携の優れたロールモデルとなっている。

山口氏は学内の三つの機関に所属し、ウイークデーは大学職員として産学官金コーディネーター研修の運営など産学連携に関わるワークをこなし、土曜日は、午前9時~午後8時まで、社会人大学院生としてMOTを学び、仕事と研究活動に明け暮れる多忙な毎日を送っている。山口氏は、「大学院では、大学の学部からの進学者や、私のように企業から来ている社会人、中国やボリビアからの留学生と、立場や国、年齢も違う人たち十数人が共に学び、良い刺激を受けています」と前向きだ。

山口氏を指導する学術研究院教授小野浩幸氏は「学金連携プラットフォーム」の提唱者であり創設者で、「大学の職員としてコーディネーター業務の経験を積み、学位を取得し、銀行に戻ってさらに活躍してもらいます」と、この制度の狙いを強調した。

(取材・構成:本誌編集長 山口泰博)